技術記事 -IoT社会と電池-
円筒形CR電池で実現するIoT社会 | ||
LPWA通信機器に適した電池ソリューション |
IoT社会におけるキーコンポーネンツ
これまでにさまざまな分野で取り組みのなされているIoT(Internet of Things)は、通信技術の発展とともに、その広がりはとどまることを知りません。IoTデバイスは電池技術とのつながりが非常に強く、マクセルは、スマートメーターや通信機端末などの用途に向けて技術開発に取り組んできました。
なかでも、そのような通信ネットワークの構成に必要となる通信機、中継器の電源に適した円筒形二酸化マンガンリチウム電池(以下、CR筒形電池)について紹介します。
LPWA中継器、センサーノード端末向けCR筒形電池
IoT機器によるネットワークを構成する場合、その方式は大きく4つに大別でき、Wireless Local Area Network(以下WLAN、Wi-Fiなど)、Personal Area Network(以下PAN、Bluetooth、ZigBeeなど)、Low Power Wide Area Network (以下LPWA、LoRa、Sigfoxなど)、セルラーネットワークが広く知られています。ネットワークを構成する場所や、その用途に応じて、通信方式が選定されています。例えば、水道、ガスなどのスマートメーターの場合、都市部においては、エンドポイント端末同士のホッピング通信によるメッシュネットワークを構成することにより、効率的かつ信頼性の高い通信を可能としているケースが知られています。
さまざまな通信技術の通信距離と電力消費(通信速度)の関係
LPWA通信は、低消費電力で長距離のデータ通信が可能とする技術で、IoTに適した通信方式として注目されています。Wi-Fiやセルラー通信ほどの大電流放電特性は電池に求められない一方、機器の設置個所が限られるケースもあることから、十分な放電性能を備えつつも、高エネルギー密度の電池が必要とされています。
通信端末同士のホッピング通信で構成するメッシュネットワーク。CR筒形電池の多セルパックはセンサ端末、大容量電池パックは中継器、ゲートウェイの電源に適する。
マクセルでは、そのような通信機器用途に適した高容量CR筒形電池「CR17500AU」を開発しました。この電池は業界最高レベルの高容量∗1を実現し、既存のCR筒形電池に比べて、電池本数の削減が期待でき、通信機器メーカーにおける使用部品点数の低減、機器の省スペース化につながります。
マクセルのCR筒形電池の特長
マクセルはCR筒形電池を2005年に商品化しています。特に長期にわたる安定した放電特性から、スマートメーターやIoT通信機などに採用されています。このような性能を達成するための特長的な技術をご紹介します。
独自の電極構造
CR筒形電池では、一般に捲回型電極構造とボビン型電極構造が知られています。捲回型電極構造は大電流放電が可能な一方でエネルギー密度を高めることが難しく、ボビン型電極構造はその高いエネルギー密度に対して、大電流負荷では捲回型に劣ります。マクセルはこの点に着目し、必要な負荷電流密度と厚みを最適化した独自の捲回電極を開発し、通信機用途に適した大電流特性と高容量の両立をめざしました。
電極構造の違いによるCR筒形電池の重要特性比較
長期信頼性技術
特にスマートメーターなどの長期間使用されるIoT通信端末に求められる長期信頼性技術をご紹介します。
高密閉構造
耐熱ガスケットとレーザー封止により高気密性を確保し、電解液の揮発や外部からの水分侵入などによる性能低下を抑制します。
電解液
電池反応において重要な役割を担う電解液の最適化により、放電性能向上だけでなく、長期使用におけるガス発生の抑制などにより電池の長期信頼性を高めています。
リチウム電極
高エネルギー密度を有する金属リチウム表面に表面処理を施すことにより、長期にわたり安定した性能を発揮します。
これらの技術により、例えば、長期使用におけるインピーダンスの上昇を抑制し、10年の長期信頼性∗2を確保しています。
未使用品と10年相当貯蔵後のCR筒形電池における電池消費容量と内部抵抗の関係
試験電池:CR17450(電池サイズ 直径17mm、高さ45mm)
初度品と、摂氏+80度(℃)57日間貯蔵品(室温10年相当の劣化を再現)について、所定の容量を放電したのち、各測定点において摂氏+20度(℃)における電池の内部抵抗を測定。
本データは、改良の効果検証のための実験データであり、保証値ではありません。実際の性能については弊社までお問い合わせください。
CR筒形電池のラインアップ
品名 | CR17335A | CR17450A | CR17450AH | CR17500AU | |
---|---|---|---|---|---|
公称電圧(V) | 3 | 3 | 3 | 3 | |
標準容量(mAh)∗1 | 1650 | 2500 | 3000 | 3500 | |
エネルギー密度(Wh/L)∗2 | 651 | 735 | 882 | 926 | |
標準放電電流(mA) | 5 | 5 | 1 | 1 | |
最大パルス放電電流(mA)∗3 | 1500 | 3000 | 2000 | 2500 | |
作動温度範囲(℃)∗4 | -40 ∼ +85 | ||||
寸法∗5 | 直径(mm) | 17 | 17 | 17 | 17 |
高さ(mm) | 33.5 | 45 | 45 | 50 | |
質量(g)∗5 | 17 | 22 | 24 | 26 |
- CR17500AUの標準容量は摂氏+20度(℃)の環境において標準放電電流で放電した時、終止電圧1.5ボルト(V)までの持続時間から求めたものです。
その他品番の標準容量は摂氏+20度(℃)の環境において標準放電電流で放電した時、終止電圧2.0ボルト(V)までの持続時間から求めたものです。 - エネルギー密度 = 標準容量 × 公称電圧 ÷ セル体積 の計算による。各品種の相対的なエネルギー密度を示すための計算値です。
- DOD50%において1.0ボルト(V)を上回る電流値(摂氏20度(℃))、最大パルス放電電流は、各セルの放電性能を示す目安であり、実際のご使用条件によって変わります。個別条件における実力値は、弊社までお問い合わせください。
- 摂氏+60度(℃)を超える温度でご使用いただく場合は、使用条件などを当社にご確認ください。
- 寸法、質量は電池自身のもので、仕様により異なります。
これらのデータおよび寸法は保証値ではありません。詳細については当社までお問い合わせください。
LPWAベースステーション通信機向け電池パックソリューション
郊外や山間、広い農場などで都市部のようなメッシュネットワークの実現が難しいケースでは、NB-IoT(LTE Cat.NB1)、LTE-M(LTE Cat.M1)、LTE Cat.1などのセルラー系LPWA技術が採用されるケースが知られています。この場合は、非セルラー系LPWAと比べて大きな消費電力が必要となりますが、屋外などでは電源の確保が困難となります。このようなケースでは、通常の電池では電気容量が足りないこと、ユースケースによって必要な電気容量がさまざまであることから、マクセルでは、ご要望に応じて複数電池セル構成の電池パックソリューションを提供しています。
複数の並列セル構成によって、電池パックの容量カスタマイズが可能となります。
CR筒形電池「CR17450A」セル35並列の大容量電池パックで、大きな消費電力にも対応
今後の通信端末に向けたマクセルの電池ソリューション
高エネルギー密度
10年以上の長期信頼性
摂氏-40度(℃)~+80度(℃)の幅広い温度範囲
パック電池ソリューション提案
数々の独自技術により、これらの特長を持ったマクセルのCR筒形電池は、IoT用途だけでなくさまざまな用途にご検討、ご採用いただいています。
通信機に必要なパルス放電電流と容量分布
- 業界最高レベルの高容量:2021年2月17日現在。17500 サイズの円筒形二酸化マンガンリチウム電池において。マクセル調べ
- 長期信頼性:環境温度摂氏+20度(℃)において未使用時の設計寿命。電流値や環境温度などの条件により、実際に使用できる期間は異なります。
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