ガルバニ電池式鉛フリー酸素センサ(O2センサ)
マクセルが酸素センサで取り組んでいること
- 有害物質である「鉛」を使わない∗1という技術課題を克服し、鉛フリー∗1化を実現しました
- 土壌汚染や水質汚染による生態系および人体への影響リスクを軽減させるために、当社では2025年度から酸素センサを鉛フリータイプのみにして製造販売していきます
- 世界中の機器メーカーとパートナーシップを構築することによって、持続可能な社会の実現をめざします
- 鉛を使わない、鉛フリー:製品を構成する各部品(均一物質中)に含まれる鉛が0.1wt%以下であることを意味します。
酸素センサとは
酸素は空気中に存在し、地球の大気の約21%を占める無色、無臭の気体です。ほとんどの生物の呼吸において必要不可欠であると同時に、ものが燃えるのを助ける性質があります。
酸素センサは、このような環境中の酸素濃度を測定するためのものです。酸素センサは多くの産業、医療、環境モニタリングなどの分野で使われており、センシング技術やIoTの進化によりその用途はますます広がっています。
例えば、車検時に車両の排気ガス中の酸素濃度を正確に測定して、排ガス規制に適合するか確認するために使用されます。
また、医療用途では人工呼吸器や麻酔器に酸素センサが組み込まれ、患者に供給される酸素の濃度を管理します。
ガルバニ電池式、ジルコニア式、磁気式、光学式など、酸素センサにはさまざまな方式や種類があり、それぞれ特長が異なります。
なかでもマクセルの酸素センサのようなガルバニ電池式は、常温で駆動し、小型で軽量、外部電源が不要なことから、手軽に酸素濃度を測定することができます。このような特長から、マクセルのガルバニ電池式酸素センサは、医療分野、排ガス測定、バイオテクノロジー機器、食品保管、教育分野などさまざまな用途で使用されています。
ガルバニ電池式酸素センサと鉛
世界中でさまざまな用途に使用されているガルバニ電池式酸素センサですが、その電極(負極)には一般的に鉛が使用されています。
鉛は有害物質であり、土壌や海洋の汚染、人体への影響などのリスクが知られています。鉛は自然界に存在し、私たちは日常的に微量の鉛を摂取しています。しかし、人間の産業活動によって土壌、大気、水などに排出された鉛が生態系を汚染し、私たちの体内に入ることによって、健康に影響を及ぼすことが懸念されています。そのため、環境中への鉛の排出を最小限に抑えることが重要となります。
このような社会課題に対して、近年では環境保護と健康維持の観点から一般家電などでは鉛フリー化(製品に鉛を使用しないこと)が世界中で進んでいますが、代替技術が確立されていなかった酸素センサのような製品では、現在も鉛が使用されています。
マクセルの鉛フリー化技術
ガルバニ電池式の鉛フリー化は世界でも技術的に難易度が高く、代替技術が確立していないと考えられてきました。しかしマクセルでは、10年以上の基礎研究を経て、2019年に環境に配慮した鉛を使用しないガルバニ電池式鉛フリー酸素センサの開発に成功しました。
鉛に代わる負極だけでなく、正極や電解液といったセンサを構成する主な材料を抜本的に見直し、従来品と同等の特性を実現することができました。
鉛を使用した酸素センサの代替となる鉛フリー酸素センサの機種を段階的に追加し、それらが市場で問題無く使用できていることが確認されたことから、マクセルでは、主力製品である鉛を使用した酸素センサの販売を2025年3月に終了することを対外的に発表し、鉛フリー酸素センサのみを販売していくことを迅速に決断しました。
持続可能な社会をめざして
現在も世界中で鉛を使った酸素センサが使われていますが、鉛フリー酸素センサに切り替えることで、搭載機器メーカーの企業価値を向上させるとともに、土壌汚染や水質汚染による生態系への影響が軽減されていくことが期待できます。
マクセルは、ガルバニ電池式鉛フリー酸素センサの製造・販売を通して世界中の機器メーカーとパートナーシップを構築し普及させることにより、持続可能な社会の発展に貢献していきます。
∗ この記事に掲載された情報は、2024年7月時点のものです。