薄形フレキシブル電池Air Patch™ Battery

「Air Patch™ Battery(エアーパッチバッテリー)」は厚さが1ミリメートル未満で簡単に折り曲げることができるシート形電池です。電解液には人体に無害な水溶液を使用しているため、肌に触れても安心です。人体にパッチを貼り付けても違和感が少なく、一回ごとに破棄できるため衛生的です。

APB 薄形フレキシブル電池 Air Patch Battery エアーパッチバッテリー

体に装着する電池を安全に

少子高齢化に伴い、医療が不可欠である高齢者が増加し続ける一方で、少子化による医療費高騰や医師の不足から、在宅医療や予防医療のニーズが高まっています。
世界の医療機器市場の中でも、医療ヘルスケアパッチ市場は、インスリンや鎮痛剤などの薬剤投与の他、血糖値、心電図、体温、皮膚の状態などの生体データ取得に用途が広がりつつあり、急速な普及が見込まれています。利便性の高さから体に貼り付けて使うウエアラブルタイプの機器の普及が進む可能性が高く、一定期間連続して使うことが想定されるため、仮に電解液が漏れ出ても体に影響を及ぼさないようにすることが必須です。
ヘルスケア関連機器や腕時計など小型の電子機器の電源としては、価格が安いボタン型電池が使われています。電池の性能を左右する電解液には、電池性能を高めるために人体に害を及ぼす可能性がある水酸化カリウムやリチウム、有機溶剤などを含んでいるケースが多いため、「体に装着する機器として使うためには安全性が欠かせない」と考え、開発に着手しました。そして、電解液に「水素電解液等」を使うことでこの課題を解決しました。

電池特性と安全性の両立

「Air Patch™ Battery」の開発は、マクセルのエネルギー事業本部だけでなく、開発本部との連携に加え、新たに材料メーカー各社と連携することで実現しました。
電池開発においては安全な材料を使いながら、電池として十分な性能を出すことは容易ではなく、開発上の課題でした。電池特性と安全性の両立は、電解液に電気を通しやすく、安定した電気特性などが必要になるため、安全性や濃度などを検証しながら数十種類の中性塩を丹念に調べあげました。
マクセルは電池事業が祖業でもあり、電解液には長年培ってきた知見があります。材料に関するデータベースの他、電気化学や分析技術といったノウハウを活かしながら、最適な条件の電解液を開発しました。さらに、電池の性能を十分に引き出すには電解液と相性の良い電極材も欠かせません。中性塩の電解液を使う場合、電極が自己放電を起こすという課題がありました。そこで、電極の素材や加工方法など無数の組み合わせを検討し、電解液に加える添加剤などを工夫することにより、自己放電しにくい高性能な電極をつくることに成功し、従来の水溶液系薄形フレキシブル電池と比べて2倍以上のエネルギー密度も実現し、電圧は1.2ボルトと通常のボタン電池の1.5ボルトと遜色ないレベルになりました。現時点では、同種の材料を用いた電池は他社にありません ※1。
薄形フレキシブル電池の中で、リチウムイオン二次電池でリチウムや電解液に有機溶剤を用いている製品は、引火・発火の危険性があり、航空輸送する際も規制を受けます。一方、「Air Patch™ Battery」は中性の塩水のような水溶液系電解液を用いているため、引火・発火の心配がありません。また、万が一電解液が漏れても安全な設計となっています ※2。
※1 2018年11月 マクセル調べ
※2 通常の電池に比べ、手等の皮膚

コストを抑え、医療ヘルスケアで選ばれる電池に

ウエラブルデバイスとシート形電池

電源として小形で使いやすいシート形電池の普及が進むことで、パッチが大量に使用・処分されることになり環境に関する法規制も厳しくなる可能性があります。通常の電池は廃棄する際に、環境負荷を低減するために特殊な処理を施す必要があることに対し、「Air Patch™ Battery」は処理のプロセスが削減されます。
「Air Patch™ Battery」は2020年度の量産を予定しています。医療ヘルスケア分野(血糖値測定用パッチ、心電図用の電極パッチ、心拍数測定用パッチ等)では既に酸化銀電池(SR)やコイン形二酸化マンガンリチウム電池(CR)が用いられており、従来のボタン形電池の代替として使用されるためには、価格も同等程度をめざし、コストを抑えながら安定した品質を実現できる生産ラインの開発も並行して進めています。

ボタン電池 マクセルのシート乾電池

また、顧客開拓に関しては、電池自体の提案に加えソリューション提案できるよう、各種メーカーと協業し、国内外のデバイスメーカーへサンプル出荷を開始しています。また、半導体部品の新光電気工業(株)とは指先に装着する血中酸素濃度センサーモジュールを試作しています。センシングや通信に必要な電力をシート形電池で供給予定です。

マクセルの安全性技術と高エネルギー化技術を込めた製品です

安全上の課題を抱えている電池を体に装着して使うことに違和感があり、開発に着手しました。 「Air Patch™ Battery」は、高い安全性で、環境にも配慮した薄形・高容量・フレキシブルな形状であり、マクセル独自の他社にない新しいコンセプトの電池です。ハサミで切っても、水につけても発熱や発火が起きない安全面にこだわり開発しました。
医療用ヘルスパッチや投薬パッチ等のウエアラブル・ディスポーザブル機器の電源としての利用の他、各種ウエアラブル機器、商品管理のRFID等にも使用可能です。ウエアラブル機器の潜在市場は大きく、新開発した「Air Patch™ Battery」で新市場を創出し社会に貢献し続けたいと思います。

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